患者さんの主訴であった前歯の噛み合わせについて、臼歯関係の咬合関係は正常でしたが、前歯部の開咬(噛み合っていないとこと)が上顎前歯部の傾斜捻転とともに見られます。

下顎前歯部も同様に正しい歯列弓とならず、捻転を伴い全体的に歪んだ状態でした。

上顎の口蓋側の状況

上顎は小臼歯部の遠心に回転することにより前歯部側にスペースを作ります。前方に突出した2番を正しい位置に戻していきます。このように歯の収まる場所を丁寧につくり、上顎の前歯部を並べて行きます。

臼歯部のローテーション(捻転)を解消しながらスペースを作り、同時にレベリング(ガタガタしたところを改善)します。

噛み合わせの強いところや、噛み合っていないところを調整します。そのうえで隙間を閉じると同時に微調整をおこなっていきます。矯正治療後はリテーナーによる保定をおこないます。

また噛み合わせとは別の治療としてこの患者さんでは、左上5番の根管治療をおこないました。矯正治療というと専門医院が良いと思われがちですが、こうしてお口全体の治療と管理ができる点は一般歯科での矯正治療最大のメリットです。

計画に基づき、マウスピース型矯正(インビザライン)の専用シミュレーションソフト(クリンチェック)で治療を進めます。このクリンチェック作成時は、下顎前歯部が移動により、顎骨からでないように矯正計画が現実的な歯の動きとなるように設計することが重要です。

こちらは、6ヶ月後の予測です。コンピューターでの治療計画の策定はとても分かり易く、患者さんにとってもメリットの大きいものですが、CG で計画する治療が解剖学的な限界を超えないように注意が必要で、速さ優先だけでは結果として予後の悪化を招くことが多くなります。

こちらが6ヶ月後の実際の様子です。治療第一段階は上記の予想計画からずれていたため、計画を修正しながら矯正治療を進めます。このように実際の矯正治療のなかでの生体の変化に沿って計画を修正することが大事な部分となります。当初の CG はあくまで計画で現実を見ない矯正治療は机上の空論となりがちです。

治療計画からずれていた歯の動きを修正して仕上げのアライナーを作成します。この様にステップバイステップで治療のゴールへ向けた修正を丁寧におこなっていきます。

上顎右上3番と下顎の3番の隙間を修正します。その他、細かな噛み合わせなど小さくても大きなトラブルの原因になる噛み合わせを丁寧に修正していくことで、最初の治療計画通りの、場合によってはそれ以上の矯正治療を目指します。

さらに手を弛めずに仕上げの調整を行います。患者様と決めた治療のゴールを満たし、患者様のご満足を頂き矯正治療を終えました。途中、新型コロナウイルスの感染拡大による自粛で中断のがありましたが治療開始から2年1ヶ月(25ヶ月)でマウスピース型矯正による治療を完了しました。 矯正治療の完了後はマウスピース型リテーナー(保定装置)を指定期間用いて頂き、矯正後の後戻りを防止します。